託宣が下りました。
「うわあ」
ヨーハン様が苦々しい声でつぶやきました。「こりゃすっごいや……追ってくる間に成長したのか」
いえ、今この瞬間も成長しています。見上げる高さがどんどん高くなっていくのです。
それは、不定形のゲルのような魔物でした。体が半透明で、その体を通して向こう側の景色が見えています。
魔物学で言う、スライムなのでしょう。ですが――
スライムは他のスライムを吸収して巨大化するとは聞いていましたが、こんな風に自ずと大きくなる場合もあったのでしょうか?
ぶにょぶにょの体が上に伸び、ぐりんとわたくしたちを見下ろします。……目はありませんが、なぜか視線を感じるのです。
「改造したかな。それとも……」
ヨーハン様は思案するように独りごちました。
興味深そうな声と言い、完全に学者の顔です。
「呑気に言ってる場合じゃない! 倒せるのか?」
ソラさんがヨーハン様にしがみつきます。
ヨーハン様は苦笑して、ソラさんを優しくはがしました。
「ちょっと予想外だったけど……そんなこと言ってられないよねえ」
そうして――
彼はすらりと剣を抜きました。
スライムはその形状から物理攻撃が大変利きづらいそうです。ですが、ダメージを与える方法がないわけではありません。
それは、隠されている弱点を探し当て、貫くこと。
人間でいう心臓でしょうか。そういった部分が必ずあるのだそうです。
ただ――
不定形で半透明なスライムのそれを見つけ出すのは至難の業だとか。熟練の戦士でなくては、とうていできないと。
……そう教えてくれたのは、ヨーハン様だったのですが。
ずるり。
スライムが動きました。ぶにょりとした体が迫ってきます。
道のすべてを埋め尽くしそうな圧迫感。空気が薄くなった気がして、それだけでこちらは卒倒しそうです。
「アルテナ様、前に出てきてはいけませんよ」
やつの狙いはあなたなんです――。
ヨーハン様は厳しくそう言いつけ、そして。
両手で剣を握りしめ、スライムに飛びかかりました。運動音痴であることをフォローするように、真っ正面から勢いよく。
「はあああああああああっ!」
剣で斬りつけるたび――
スライムの体の一部が辺りに飛び散ります。
しかし一度ちぎれたスライムも、本体にすぐ吸収されていきました。遠くへ飛んだスライムはその場でぷるぷると震えています。見ているだけでぞっとする光景です。