託宣が下りました。

「闇の命により我も加勢する!」

 ソラさんの声が聞こえ、はっと振り向くと、見覚えのある藁人形が巨大化しつつあるところでした。

 わたくしは引きつりました。

「そ、ソラさん、その人形――」
「暴走じゃないぞっ。ちゃんと練習したんだ!」

 そう言われても……信じてあげたいのはやまやまなのですが。

 巨大藁人形はスライムと同等ほどの高さになりました。そのままのっしのっしとスライムに近寄ると、藁でできたその腕をぶんと振り下ろしました。

 ぶにょん。スライムの体が変形します。しかし剣のようにちぎれません。
 ぶん、もう一撃。
 ぶにょにょん。変形するだけ。

「………」

 ソラさんがしおしおと肩を落とすのが見えました。わたくしは励まそうと彼女に駆け寄りました。
 しかし、

「いいぞソラさん! そのまま人形に攻撃させてくれ!」
「………!」

 剣を振るい続けるヨーハン様の声。ソラさんがはっと顔を上げ、

「い、行け! 我が(しもべ)よ……!」

 藁人形は再び腕を振りかざしました。

 ぶにょん。変形するだけ。

 でも……ヨーハン様の顔が輝き始めました。彼には何かが見えているようです。

「よし! このまま行けば……!」

 彼の歓喜の声が聞こえました。ぶにょん。変形したスライムがぼよよんと体を回復させます。しかしヨーハン様の攻撃は何かを見つけたかのように、一カ所だけを狙い始めていました。

 弱点を見つけたのです。

 魔物に詳しいヨーハン様のことです。きっとこのままスライムを倒せる――。

(でも)

 おかしい。わたくしの頭の中で危険信号が鳴り響いていました。

「行け! 行けぇ(しもべ)!」

 興奮した様子で叫び続けるソラさんの背中に手を当てながら、わたくしは言いようもない不安に突き動かされました。

 そのときどうしてそんなことをしようと思ったのか――。

 おそらく修道院にいたときの習慣なのでしょう。わたくしは――とっさに祈りを捧げたのです。

 魔術の光で真昼のように見えても今は夜。真っ暗な空であろうと、そこには必ず()()()()
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