託宣が下りました。

 想像して血の気が引きました。
 魔物はふつうの生物(存在?)ではないので、薬草がわたくしたち人間と同じように作用するとは限らないのです。

 ではあのスライムがヨーハン様の予想外に成長していたのは、薬草を落としてきたせいなのでしょうか? ああ、何だか色んなことが悪い方向へ転がっている気がします。

 こんなときにお酒臭い臭いを振りまいている自分が憎い!


 そんなことをしている間にもスライムはじりじりとこちらに近づいてきています。

 結局怪我が多すぎてろくな手当てもできないまま、ヨーハン様は自力で体を持ち上げ、スライムに剣を向けました。

「無理です! もう戦わないで! 怪我が……!」

 わたくしは泣きそうな気持ちで言いました。
 ヨーハン様は少し笑ったようです。

「いいんです。この怪我は罰みたいなものなので」
「ば、罰? いったい何の」
「かっこつけた罰ですねえ。僕にも倒せると思った。甘く見過ぎました」

 でも、と最後はとても小さな声で。

「……あなたの前でいいかっこしたかったんですよぅ。()()()()()()()

「え?」

 今、何と? よく聞こえなくて、わたくしは聞き返しました。
 彼は笑っただけで、それ以上何も言いませんでした。

 背後からソラさんの鋭い声が飛び、わたくしたちの意識を引き戻します。

「スライムを見ろ! 来るぞ!」
「!!!」

 わたくしはヨーハン様とともに地面に伏せました。
 視界の端で、巨大スライムがまた収縮するのが見えました。

 つぶてが再び背中の上を飛び抜けていきます。下向きの角度では飛ばないつぶてで幸いでした。でも、よく聞くとあちこちで破壊の音がします。この辺りの家屋に被害が及んでいるようです。

 悲鳴が上がりました。甲高い女の子の。

「ソラさん……!?」

 つぶてがやむと、わたくしは即座に振り向き、ソラさんを探しました。

 彼女は――

「い、た、ぁ……」

 彼女は、地面に伏せてはいませんでした。立ったまま。

 ふらり、ふらりとその小さな体が揺れます。体中から、つぶてがかすめた血の筋――。

 ヨーハン様のようにスライムの間近で攻撃を受けたわけではなかったので、重傷ではないようでした。けれどそれでも見過ごせない怪我です。

(どうして?)

 スライムの動きを見ろと言ったのは彼女です。それなのに、どうして自分自身が避けなかったの?

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