託宣が下りました。

「し、知りません」

 わたくしは顔をそらしました。わたくしを狙った人間がいる?
 そんなの、心当たりは一人しかいないではないですか。

 あの酔っ払いのご老人は……お姫様の遣いだったのでしょうか。



 気がつくと、ソラさんが地面からじっとわたくしたちを見つめていました。

 ……なぜでしょう、目がきらきらしています。

「そそソラさん、ソラさんの怪我の手当てをしなくては!」
「あっ、巫女動いちゃダメ! そのまま」

 なぜか制止されました。顔からも腕からも流血している怪我人当人に。

「お兄ちゃん、巫女を放しちゃダメだからね。ようやく、こういうシーンを見ることができるんだから!」
「ん? よく分からんが、頼まれなくても放さんぞ」
「何を言ってるんですかあなたたちは!!!」

 久々に発動、アレス様直伝騎士突き飛ばし術。げふうと騎士が背中から倒れてゆきます。わたくしは知らんふりをしてソラさんに向き直りました。

 ソラさんは思いっきり不満そうでした。

「ちぇっ。もっといちゃいちゃしててほしいのに」
「ソラさん……」

 呆れたわたくしが説教しようと口を開きかけたそのとき、ソラさんは突然ぐたりと地面に伏せました。

「そ、ソラさん?」
「す、少し休ませてやってくれ」

 倒れていた騎士が体を起こし、むせながらそう言いました。「――ソラ、よくやった。全部お前のおかげだ」

(え……?)

 騎士は腰に下げていた水筒と、懐から粉薬らしきものを取り出すと、ソラさんを抱き起こし口に注ぎました。だいぶこぼれてしまいましたが、何とか飲んでくれたようです。

 瞼が落ちかけるソラさんに、騎士が笑って話しかけました。

「カイが激怒しているぞ、位置飛報(ひほう)の術は危険だから使うなと言ってあったろうと――。カイが戻ってきたら覚悟しておくことだな、ソラ」


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