託宣が下りました。

 騎士はなぜか、むすっとした顔でヨーハン様とわたくしを見ました。「……いつの間に仲良くなったんだ?」

 なんでしょうか、突然不機嫌そうなこの態度は。思わずこちらもむっとなってしまいます。

「仲良くも何も……ヨーハン様には魔物学をご教授いただいているんです」
「魔物学? ああ、ヨーハンの唯一の取り柄か」
「唯一とはなんですか? ヨーハン様にはいいところがたくさんあります!」

 何となくむきになって主張すると、騎士はますます苦虫をかみつぶしたような顔をしました。
 何かを言いたそうに口を開きますが、やがてむっつりと閉ざします。

「ヴァイス様」

 ヨーハン様は苦笑して、騎士に歩み寄りました。「怒らないでくださいよ~。僕が身の程知らずだっただけです~」

「……近づこうとしたことは認めるわけだな」
「認めますけど、無理です。僕はあなたに勝てません。いつもそうじゃないですかー」
「お前なあ」

 騎士は呆れた顔でヨーハン様を見上げました。あぐらをかいた膝に頬杖をつき、ため息をつきます。

「自分でさっさと見切りをつけて敗北宣言するのやめろと昔から言ってるだろうが」
「いや~僕は臆病なんですよ。致命傷になる前に去りたいんです」

 それとも。ヨーハン様は少しだけ意地の悪い顔をしました。

「……僕が本気になってもいいと?」
「構わんぞ」

 騎士は即答しました。「ただし、その場合は俺も本気で叩きつぶす」

「はは。今すでにやきもちやいてるような人が偉そうですねえ」
「それとこれとは別だ。何で俺の知らない間に……まったく」

 ぶつぶつと言って、恨めしそうな目でわたくしを見ます。そんな目で見られるいわれはないのですが。

 そもそもこの人たちは一体何の話をしているのでしょう? 何だか背中がむずむずしてくる……ような……気がするの、ですが……まさか。

 わたくしはこそっとヨーハン様を見ました。

 ヨーハン様は、わたくしを見てはいませんでした。
 ただ……騎士ヴァイスに苦笑を向けています。

 そのとき、わたくしは思いました。

(やっぱりわたくしたちは似ているんですね)

 どうあってもこの騎士に気を惹かれずにはいられない、そんなところも。



 ヨーハン様は自力で帰ると言って聞かなかったため、彼一人先に帰ってもらい――

「よし。早く医務院へ行くか」

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