託宣が下りました。
眠るソラさんを抱き上げた騎士がそう宣言しました。「巫女も。看てもらったほうがいいぞ」
それはもちろんです。ですが……
「……あの、わたくしは先に行きたいところがあって……」
「行きたいところ? どこへ?」
わたくしは騎士に父のことを説明しました。そもそも自分がなぜこんな夜にソラさんと家を脱けだしてきたのか。
全部話し終わると、騎士は愉快そうに笑いました。
「やっぱり大人しくはしていないな、あなたは」
「言わないでください。反省は……しているんです」
わたくしは自分の腕のにおいをかぎました。まだ少しにおいが残っているようです。
騎士の話では、匂い袋の効果はお酒のにおいよりは短いのだそう。消えしだい、やっぱり父のところへ行きたいと思ってしまいました。自分が外へ出たことが今回の騒ぎを起こしたことは分かります。でも、今さら帰るわけにはいきません。
ソラさんのことは心配ですが騎士がいますし、何よりソラさんも父のことは心配してくれています。
「巫女の父君か」
歩きながら、騎士は楽しげに言いました。「この間会ったぞ」
「はあ。誰にですか?」
「いやだから、巫女のお父上と会ったぞ。この間」
「――、……。はあっ!?」
驚きすぎて思わず足が止まりました。
父と騎士が顔を合わせた!? そんな話、聞いていません!
「この町に到着して真っ先に挨拶に行かせてもらったぞ?」
「ど、どこで会ったんですか!?」
「そりゃあ家だ。二階に巫女もいたんじゃないか?」
「……っ、ど」
どうして。あまりの衝撃に声がどもります。
「どうしてわたくしを、その、その場に呼んだり……とか」
「俺はぜひそうしたかったがなあ。残念ながら父君が嫌そうだったんでな。大人しく従っておいた」
「………」
「だが親交は温められたぞ。俺の差し上げたものを気に入ってくれたようだったからな。うむ、あれは絶対気に入っていた!」
「贈り物……!? な、何を?」
修道院にイノシシを持ち込んでくるような騎士が父に一体何を贈ったというのでしょう。わたくしは戦々恐々として先を促しました。
騎士はひとつうなずきました。