託宣が下りました。

「腹巻きだ」
「……………………はい?」
「だから腹巻きだ。もう寒くなる時期だからな」

 ………。

 盛大なため息と一緒に、体の中にこごっていたものがすべて抜けていきました。スライム戦での緊張や恐怖……そういったものが、すべて。

 改めて、隣を歩く人の偉大さを思います。この人がいるとよくも悪くも気が抜けてしまう。

 それはつまり、安心してもいるということです。

 比べるのも失礼な話ですが、これが例えばラケシスやカイ様、極端な話アレス様でも――ここまで安心はできないと思うのです。

 ――生きたい念じるときには、この人の()り方を思い出すほど。
 わたくしは知らぬ間に、この人を頼りにするようになっていた……。

(………)

 胸がうずくような気がして、わたくしは胸元に手を当てました。何でしょうか、この感じは。落ち着かないのに、心地よい、ような……。

 騎士はそんなわたくしの様子になどまったく気づいていません。歩きながら気楽に話を続けます。

「しかしそうか。父君が危ないのか。それは行ってきたほうがいいな」
「……い、いいのですか?」
「構わん。ソラも世話になっていることだしな。こいつのことは俺に任せて、行ってくるといい」
「――……」

 顔がほころびました。こんな優しさが、今は心に沁みます。

 出会ったばかりのころはこの人の無神経さばかりが鼻についていましたが、やっぱり一人の人間、無神経なばかりではないのです。

 そんな、考えてみれば当たり前のこと。

「しかし気をつけろよ。この町に魔物が紛れ込んだのは事実のようだから――そうだ、自警団の誰かに同行してもらったらどうだ?」
「そうですね、そうします」

 素直にそう答えられました。そんなわたくしを見て、騎士がむうとうなります。

「本当は俺がついていってやりたいのだがな」
「いいんです。ソラさんについていてあげてください。――それに、あなたは洞窟に戻られるのですね?」
「ああ。奥にいる魔物が、俺がいないと倒せなさそうなんでな」

 当たり前のようにそう言う彼は、相変わらずの自信家。
 わたくしは微笑し、それから囁きました。

「……倒してきてくださいね。無理だったー、なんて話、絶対聞いてあげませんから」
「おお、心配ない。そんな泣き言は言わんさ」

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