託宣が下りました。
「ところがそうもいかないんだよね。洞窟攻略が今佳境でさあ」
顔をしかめて、うなるように言います。「……実はもうアレス様たちは深奥にたどりついているらしいんだけど」
「………」
ほほほ、と母が上機嫌に笑いました。今朝の母はとにかく調子がよさそうです。
ちなみにわたくしも、おかげさまで昨夜脱けだしたことについてのお咎めがありませんでした。
それはありがたいのですが、こんなところまで騎士に守られたようで悔しい。
母は優雅に愛用の扇子を振ります。
「よいお話だこと。きっと今ごろ魔物も倒されていますよ」
ラケシスはむっとした顔を母に向けました。
「簡単に言わないでよ。今回の魔物は相当強いんだから――私たちも協力しないと」
「ヴァイス様たちに不可能はありません。邪魔をするんじゃありませんよ」
「邪魔なんかしない。助けるんだ」
「思い上がりもほどほどにしなさい」
妹と母の間でバチバチと火花が散ります。どうもこの手の話題だと、この二人の意見は平行線です。
かと言ってわたくしが口を出すとさらにややこしいことになるので、わたくしはただ黙って二人を見つめながら、こっそりため息をつきました。
ソラさんを医務院へ連れて行った騎士は――
深夜にはもう、洞窟へ戻っていきました。先を行くアレス様たちに合流するために、一人で奥まで突っ切るのだとか。
洞窟に行く前にわたくしに会いにきた騎士は、「待っていろ! 必ずご褒美はいただくぞ」と宣言をしていきました。わたくしは即座に近場にあった燭台を投げつけました。
我ながら乱暴でしたね、あまり反省する気にはなれませんが。
(……今ごろ、戦っている?)
そう思うと奇妙な思いに駆られます。
駆けつけて見守りたい気持ちと、何もかも任せて、安心してここで待ちたい気持ちと。
本当に、あの騎士と知り合ってから矛盾ばかりで困ります。かつては星の神に祈っているうちに、心がひとつにまとまったものなのですが。
「姉さん。そんなわけで行ってくるからね」
「……ええ」
わたくしはふと、再び冒険に出かけようとする妹を見つめました。
ラケシスはきょとんとわたくしを見返しました。
「どうかしたの?」
「ラケシス」
そっと手を伸ばし、ラケシスの手を握ってみる――。