託宣が下りました。
女性にしては大きな手です。しかもこの手にかかれば大抵のものは破壊されてしまうことを、わたくしはよく知っています。幼いころでさえ、わたくしよりずっと力の強い子だったのです。いえ、わたくしどころか、近所の同年代で勝てる子どもはいなかったでしょう。
わたくしたちはずっと一緒にいました。よくも悪くも一番影響しあってきたに違いありません。
真逆の道を歩み始めてからも、心にも体にもお互いの与えた何かが残っているのです。
そう、小さいころ――妹の『力』に一番さらされてきたのは、他ならぬわたくしなのです。
「姉さん……」
「……大きくなったわね、ラケシス」
わたくしはラケシスの手を両手で包み、にこりと微笑みました。「いい手だわ。訓練は大変でしょう」
「いったいどうしたのさ?」
「……この力でね、たくさんの人を助けてほしいと思ったの。あなたの力はそのためにあるのよ」
ラケシスは目を白黒させていました。そんな妹を見て、わたしは笑いました。
我ながらおかしなことを言っています。でも……本心です。
どうかわたくしに示してみせてほしい。『力』とは恐いものではないのだと。
かつて、サンミリオンの町の近くに小さな洞窟が発生したことがありました。
魔王がまだ存在せず、魔物の存在もたまにしか目撃されなかった時期のお話です。
その洞窟はあまりに小さく、その上発生する魔物の量も少なかったため、自警団からも深刻には相手にされず、半ば放置されていました。
……分別のなかった幼き日のわたくしとラケシスがその洞窟に入り込んだのは、好奇心のためではありません。
「猫が……」
町中で見つけた猫。それを追いかけているうちに、いつの間にか洞窟に足を踏み入れてしまっていたのです。
「猫ちゃん、どこ?」
暗い洞窟。けれどラケシスは当時から勇猛でしたし、わたくしも妹と一緒のときは恐いものがなかったのです。
そのためどちらもすぐに「帰ろうよ」とは言い出さなかった。それがよくありませんでした。
洞窟の奥から、猫の鳴き声がしました。すきま風の音とともに。
「いた!」
わたくしが嬉々として奥へ飛び込もうとしたとき――
急にラケシスに手首を掴まれ、制止されたのです。
「だめ! ねえさん」
「ラケシス?」
奥からはか細い猫の鳴き声がしています。町で見かけたときには、もっと元気な声をしていたのに。