託宣が下りました。
「ん?」

 そしてわたくしは腰をぬかしました。
 その拍子に籐のかごが落ち、薬草がこぼれて広がります。けれどそれが気にならないほど、わたくしは放心してしまいました。

 薄暗く狭いお店の真ん中に、誰かが立っていました。振り返り、満面の笑みを見せて。

「おお! また会えたな」
「……なぜ、ここに」
 わたくしは震える唇で、騎士ヴァイスに言いました。「さ、先回りなんて――卑怯です!」

 例えばわたくしの持つ薬草を見て、わたくしがこの店に来ることに気づいたのかもしれない――混乱したわたくしはそんな無茶なことまで考えました。わたくしは道に迷っていたのだから、先回りすることは十分可能です。

 しかし騎士はきょとんとしました。

「先回り?」

 そして、首を振りました。にこにこと上機嫌そうな顔で。

「いいや違うぞ。この店は俺の実家なんだ。たまたま――いや、運命だな!」

 実家――

 わたくしは口をぱくぱくさせました。そんなわたくしの様子を気にした風もなく、騎士はやがて腕を組んで重々しく言いました。

「巫女よ。言いたかったのだが」
「な、何ですか」
「――人面猿というのは、それは人間ということではないのか?」
「知りません!」

 わたくしは泣きそうな声で、そう叫んだのでした。
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