託宣が下りました。
 目的のお店が騎士ヴァイスの実家だった――。

(シェーラったら、もう……っ!)

 床に散らばった薬草をかき集めながら、わたくしは胸の中で友人に文句を言いました。

 シェーラはこれを知っていたに違いありません。だって彼女は、このお店に来たことがあるのですから!
 わざわざわたくしを一人で来させた彼女の策略。まんまとはまった自分が情けなくて仕方ありません。

「そうか、巫女はその薬草をうちに売りにきたのか。そう言えば最近修道院から買い取っていると聞いていたな」
 薬草の最後の一束を拾い上げながら、騎士はそんなことを言います。「歓迎するぞ、巫女」

 そしてわたくしを立ち上がらせようと、手を差し出しました。
 わたくしは一瞬迷ってから――さすがに親切心だと気づいていましたから――その手をかわしました。一人で立ち上がり、こほんと咳払いをします。

「このお店の責任者様はどこに?」
「親父殿か? たぶん二階だな」
「よ、呼んでいただけますか」

 ここでお役目を放り出すわけにはいきません。たとえここが騎士の実家、わたくしの敵地であろうとも、薬草を売って代金を受け取らなくては。

「わかった。巫女を親父殿に紹介するのもいいな」
「……っ」
「おーい親父殿! 客人だ!」

 二階に向かうための階段は奥に見えておりました。騎士はいつもの通りの大音声で二階に呼びかけます。いつも思うのですがこの人は声が大きすぎやしませんか。一体どこから声が出ているのでしょう?

 わたくしは、こそこそと店内を見回しました。

 謎の品物ばかりが所狭しと並んでいます。ここは魔術具店だと言います。魔術――一部の人たちだけが扱える『魔力』によって成される、数々の奇跡。そして魔術具は魔力のない人々にも扱え、力ない者が魔物に対抗する大きな手段です。

 と、知識としては知っておりますが、わたくしも実際に目にしたことはほとんどありません。
 それが今、目の前にずらりと並んでいます。天井まである棚にまでぎっしり。はしごは一応ありますが、とても載りたくないような古い代物です。

 宝石や土器、短剣や宝飾品は何となく分かるのですが……中にはただの布もあります。

 興味深く眺めていくうち、ふと――
 その中に野ねずみが山となって横たわっているのを見つけて、わたくしはヒッとのけぞりました。
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