託宣が下りました。

 騎士が意気揚々とわたくしの前に現れたのは、その翌日のこと。

「巫女! やったぞ……!」

 大声でそう叫びながら、騎士はわたくしの家の塀を乗り越えようとしました。

 わたくしはおもむろにほうきで騎士の眼前を払いました。「うお」騎士は軽くかわすと「危ないじゃないか」と抗議をします。

 わたくしは冷静に答えました。

「裏庭の塀を乗り越えようとする不審者に対抗しただけです」
「いや裏を通ったらたまたま巫女の気配がしたのでつい」
()()じゃありません、()()じゃ!」

 修道院にいたときのことをしみじみ思い出します。あのころもこうやって、とんでもないところから現れる彼を追い払おうと苦心していたのです。

 そんなに遠い日々のことではないはずなのに、何だか懐かしい。

 騎士は塀の上からわたくしに声を投げかけてきました。

「だが今さら正面からは入れん、ここから入るぞ。入ってもいいですか」
「……許可を取るのか取らないのかはっきりしてください」

 わたくしはため息をついて「どうぞ」と彼を促しました。

 彼は顔を輝かせ、即座に飛び降りてきました。それなりに高い塀なのに軽々と、本当に身軽な人です。

 それにしても驚きました。庭の掃除をしていると騎士が現れるのは修道院にいたころ普通のことでしたが、さすがに実家の庭の掃除をしているときにも現れるとは思わなかった。

「巫女! 俺は約束を果たしたぞ……!」

 改めて騎士は両手を広げました。
 満面の笑みが花開いています。わたくしはそんな彼を、じっと見つめました。

「……倒せたのですね? 魔物を」
「ああ。今回は協力者も多かったんでな、思ったより楽勝だった」

 彼の口調を聞いていると、本当に楽勝だったかのように思えます。

(……そんなはずはないでしょうに)

 わたくしは騎士に歩み寄りました。

 騎士は洞窟からここへ直行したようでした。汚れっぱなしの鎧を身につけ、剣や道具袋を腰にさげたままです。

 彼に一歩一歩近づきながら、わたくしは言いました。

「ソラさんもかなりよくなりましたよ。もう動きたがって大変です」
「ソラは医務院にいるのか?」
「いいえ、この家です。わたくしが面倒を看たかったので、引き取らせていただきました」
「巫女がソラの面倒を――? それはあれだな、実の姉妹となるための準備だな!」
「違います」

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