託宣が下りました。
やがて距離が縮まり、彼と真正面から向き合ったところで、わたくしはもう一度騎士を見上げました。
「巫女?」
背の高い彼。夕焼け色の瞳がきらきらと輝いて、わたくしを見下ろしています。子どものように。
わたくしはしばらく黙って彼を見つめていました。彼のささやかな動作を、じっと。
「巫女、俺は」
騎士の手がわたくしに伸びようとします。
わたくしは、それを制止しました。
「駄目です。手当てが先です」
「手当て?」
「怪我をしていますね、騎士ヴァイス。無理をするのはよくありません」
騎士が目を丸くしました。「よく分かったな」と感嘆の声を上げます。
どこですかと問うと、肩だと彼。
「肩当てが戦闘中に外れてしまってな」
「………」
たしかに、向かって右の肩当てが変形しています。しかも騎士がそこを触ると、簡単に取れてしまいました。中から現れたのは包帯をした肩――。
包帯に血がにじんでいます。わたくしは痛ましく目を細めました。
「……包帯を替えましょう。今替えを持ってきます」
「いいのか?」
「何を今さら遠慮するのですか? ここで待っていてください」
わたくしは家に戻ろうとほうきを壁に立てかけました。
……本当は家に入れてあげるべきなのでしょうが、今家の中では母が友人を呼んでティーパーティー中です。そこに彼を入れようものなら何が起こるか分かりません。
ちなみに父はすでに仕事に戻っていていないので、そこは心配ないのですが。
上着の代わりになるものも持ってこよう。わたくしは妙に急いた気持ちで、その場を離れました。
諸々のものを抱えて裏庭に戻ると、騎士は庭の樹を見上げて楽しげに触ったり叩いたりしていました。冬なので葉はありませんが、ひとつ季節を越すと芳醇な果実を成す樹です。
「何をしているのですか?」
「この樹は古いのだろう?」
「ええ」
「巫女の小さいころも全部見てきたのだろうと思うとな」
そう言って、幹をぺしぺしと叩きます。「いいなあお前は」などと語りかけながら。
「………」
何だか頬が少し熱くなった気がします。わたくしはふるふると顔を振り、熱を逃がそうとしました。
「何だ巫女。何かあったか?」
「いいえ! 包帯を持ってきました。座りましょう」
ちょうどその樹の下に日だまりがありました。わたくしはそこに、騎士を座らせました。