託宣が下りました。
剣と道具袋をはずし鎧を脱ぐと、血と金属と、土のにおいがただよいます。戦いの後とはこういうものなのでしょうか。
鎧の下は薄めの鎖帷子を身につけていました。しかし肩のところは壊れてしまい、包帯も露出しています。
たしか鎖帷子はそれだけで相当の重量があるはずですが、それを鎧と二重に着ているとは、この人は本当に常軌を逸しているようです。
手当てをするのに帷子が邪魔だと思ったのか、騎士は自らそれを脱いでしまいました。
わたくしは赤面しました。その下は肌着なのです。
(き、気にしている場合ではないわ)
そもそも、怪我をした肩の部分の肌着は破れています。包帯は、その肌着を乱雑に避けた上で巻かれていました。
昨夜まで父の手当てで似たような男性の姿を見ているはずなのに――勝手がまるで違う。
落ち着かない気持ちを何とか振り払って、わたくしは手当てに取りかかりました。
包帯だけ巻いて、破れた肌着を放置している騎士。その状態で鎧を着ているのはさぞかし不快だったでしょうに。
包帯をゆっくりはずしている間、騎士はずっと戦いの話をしていました。まるでしゃべってないと落ち着かないかのようです。
「ラケシス殿も活躍していたぞ。いやあさすが噂のハンターだ。なかなかいい腕だ」
「それは良かったです。足手まといにはならなかったのですね?」
「足手まといどころか。うむ、うちのパーティに入ってくれてもいいくらいだな!」
きっと彼にとって最上級の褒め言葉です。わたくしは微笑みました。
包帯をはずし終わると、現れたのは恐ろしい裂傷。思ったより大きな傷です。
「薬をつけますね。リリン草の塗り薬です」
わたくしは家から持ってきた薬を騎士の傷口に丁寧に塗り込んでいきました。
指先に感じる、騎士の肌の熱さ。傷口が持っている熱だけではないような気がします。
……何だか、それだけで胸が騒いでしまう。この気持ちは……。
「リリン草の塗り薬なんか家にあったのか? すごいな、さすが町長の家だ」
騎士は妙な感心の仕方をしました。
それはリリン草の薬、特に塗り薬が非常に高価だということを言っているのでしょう。
わたくしは首を振りました。
「元から家にあったわけではありません。今朝ヨーハン様にいただいたのです」
「……ヨーハンに?」
とたんにむっとした顔になる騎士。わたくしは構わず話を続けました。
「ヨーハン様に教えていただきました。ヨーハン様は昔、あなたがたのパーティの一員だったそうですね?」
「まあ、そうだな」
彼はしぶしぶと話に乗ってくれました。何だか少し、申し訳ないですが――。