託宣が下りました。

 わたくしはぐっと唾を飲み込みました。気迫を込めて騎士をにらむように見、

「……わ、わたくしが、あなたが怪我をしているのを見るのは好きではないと……言ったら?」
「………」

 騎士は一瞬、言われた意味が分からなかったようでした。
 しかし徐々にその顔が輝き――

「それは俺の裸が見たいということか!?」
「違います!」

 あああもう! 本当にこの人はっ!

「と、とにかくですね。傷が早く治ってほしいという話です!」
「本当にそういう話だったのか? どう考えても俺と裸の付き合いをしたいという――」
「言ってません!」

 ――これじゃ駄目。わたくしは自分に言い聞かせました。
 騎士の調子に乗せられては駄目。自分の本心が分からなくなってしまう。

 決心が、くじけてしまう。

 今までのように――認めるのが恐くて逃げるのは、もう止めようと決めたのに。


 ひょんなことから、『強さ』に苦手意識を持っていた理由を思い出すことができました。
 そして、もう大丈夫と思いました。男性たちとも向き合っていける、と。

 でもひとつだけ答が出ていなかった。どうしてもしっくりこない、騎士への思い。
 自分はこの人を、結局どう思っているのか――


 わたくしは巻き直した包帯に触れ、そっと騎士の肩を撫でてみました。

 騎士は目を細めて心地よさそうにしていました。この寒い時期に肌着姿で外にいさせられている、それなのに文句ひとつ言うことはない人。

 わたくしなどのために、魔物と戦うと簡単に言ってしまえる人……

 そのことに戸惑い、信じられず、ずっと今まで過ごしていました。
 彼に惹かれる自分を素直に認めることができず、心を偽ってきました。

 彼は『強さ』の象徴だった。恐怖であり、憧れだった。それは……本当のこと。
 でも……何かあるたびに揺り動かされるこの思いは、もうそれだけじゃない。

 原因なんて分かりません。直接のきっかけさえ、なかったに違いありません。
 それでも生まれてしまった感情が。

 彼は自分にとって『例外な男性』だと分かっていた、そのときにはもう――。
 引き返せないところまで、進んでいたのでしょう。


 わたくしは用意していた上着を騎士の肩にかけました。
 そして――そっと騎士に身を寄せ、包帯を巻いた肩口に口づけを落としました。

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