託宣が下りました。

「もしも巫女を知っている人間と鉢合わせしたら、色々面倒だろう?」
「それは確かにそうですが……本当にそれだけですか?」
「変装していれば周りに騒がれず堂々と一緒に歩ける!」
「……やっぱり無理です、行くのは」
「どうしてだ!?」

 なんていうやりとりもありつつ、結局は王都に戻ることになったのですが――。 



(な……なんだか異様に緊張する!)

 修道服でもなくドレスでもない、ふつうの王都式町民服。そしてそれに似合うメイク……
 騎士の知り合いの手によって、わたくしは見事に変身させられました。

 どうしてなのでしょう。元から地味な顔立ちをさらに目立たぬように変えただけのはずなのに、ふしぎなほど印象が違うのです。わたくし自身でさえ、鏡をのぞきこんだとき「これは誰だろう?」と一瞬混乱したほどに。

「できたわよ」

 そう言って、目の前の女性が化粧で汚れた手を拭きました。

「あ……ありがとうございます」

 わたくしが頭を下げると、女性は微笑んで「いい出来だわ」と誇らしげに言いました。

「助かったぞマリアンヌ、よくやってくれた」

 騎士が女性に握手を求めます。

「なかなか難題で楽しかったわよヴァイス」

 それに軽く手を出して応え、女性はわたくしをちらりと見て言いました。

「それにしてもあなた、磨けば輝きそうなのにもったいないわねえ」

 髪をきれいに結い上げた美しい女性です。そこにいるだけで圧倒されるような雰囲気といい、社交界に出ても通用しそうですが、本人は酒場の給仕がお仕事なのだそう。

 あるいはそういうお仕事だからこその華やかさなのかもしれません。派手ではないのに美しさを引き立てる彼女の装いを見ていると、わたくしは自分の()り方に疑問を感じてしまいます。

(……そもそもわたくしは修道女だし、お化粧は似合わないし、地味で構わないと思っていたんだけれど……)

 でも、こうして騎士の隣にいるマリアンヌさんを見ていると……何だかお似合いな気がして。

 元々騎士自身が華やかな人です。その隣には存在感のある人のほうが合うに決まっています。

 そう思うと、胸がちくちくと痛むのです。

「ねえヴァイス。この子を説得してみたら? もったいないわよって」

 マリアンヌさんは目を輝かせ、期待するように騎士を見つめます。

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