託宣が下りました。

 騎士は首をかしげました。

「別にどうでもいいだろう。巫女が好きな装いをしていればそれで」

(騎士……)

 痛んでいた胸がほっと和らぎました。
 これは甘えでしょうか。本当は美しくなったほうが騎士だって喜ぶに決まっているのに。

(でも……嬉しい)

 ふうん、とマリアンヌさんが興味深そうに目をすがめます。

「そんなにこの子が大切なの、ヴァイス」
「大切だが、何か問題があるか、マリアンヌ」
「……よく言うわねえ。昔あなたに言い寄った女相手に」
「………!」

 わたくしはうろたえました。
 おそらく顔に出たのでしょう、マリアンヌさんはわたくしを見て妖しく微笑みました。こちらに近づき、耳打ちをするように囁きます。

「気をつけたほうがいいわよ? この男はとても優しくて、ひどく残酷だからね」
「………」
「何の話だ?」

 聞こえていたようです、騎士は本気で理解できていなさそうな顔で言いました。

 わたくしはどう応えていいか分からず、ただマリアンヌさんを見つめました。

 マリアンヌさんはにっこりと笑って、わたくしの手を取りました。

「何はともあれ自信を持っていいわよ。こんな奔放な男の気持ちをとらえたなら、あなたにはそれだけの魅力があるんだから。たとえどんなにささいなきっかけでもね」



「シェーラ殿に手紙を出しておいた」

 マリアンヌさんの工房を出ると、騎士は空を見上げて雲の位置をたしかめました。「ん。雨が降るかもしれんな」

 言われてみると向こうから流れてくる雲の色が暗い。雨雲にも見えます。
 わたくしは憂鬱に思ってつぶやきました。

「ソラさんやアレス様たちのお怪我に響きますね」
「その中に俺は入っていないのか巫女よ」
「騎士は雨だろうが嵐だろうが怪我くらい治すでしょう?」
「その通りだが、何か悔しいな」

 ぶつぶつと言いながら左肩をさすります。わたくしはそこにある裂傷を思いました。口では何と言おうと、心配していないわけがありません。

 本当は定期的に傷口を見せてほしいくらいなのですが――そんなこと、恥ずかしくて言えないじゃないですか。


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