託宣が下りました。

 わたくしと騎士、アレス様にカイ様、そしてソラさんは、全員揃って同じ馬車で王都に戻ってきました。

 カイ様は「ソラちゃんをちゃんと家に帰す約束をしたので」、アレス様は「ヴァイスと一緒ではアルテナが大変だろうから」とのことでしたが……帰りの馬車の中はそれはそれはにぎやかなものでした。ソラさんは怪我が治りきっていないのにはしゃいでネズミを暴走させるし、カイ様はソラさんの対応に追われるし、騎士はわたくしにひたすら構うし、アレス様はそんな騎士につっこみつっこみつっこみ続けるし……思い出すだけで疲れます。

 それでも、行きの馬車での騒ぎを考えれば何て平和な道程だったことか。
 もしも何か起こっても……この顔ぶれならばどうにかなると、そう信じられる。

 ただ、王都に着いても全員一緒に行動はできませんでした。アレス様は王宮に挨拶に行かなければならず、カイ様は約束通りソラさんを家へ連れて行き、残ったわたくしは騎士に連れられて、マリアンヌさんの工房へやってきたのです。

 変装、するために。

 そして奇妙な身支度が終わり――

 シェーラとの約束の場所へ行くため、わたくしは騎士と連れ立って町中を歩いていきました。

 王都はたしかに活気づいているようでした。心なしか、以前わたくしが住んでいたときよりも明るく見えます。

「お祭り騒ぎ……」

 わたくしが何気なくその単語をつぶやくと、「おお」と騎士がうなずきます。

「情報は正しかったな。たしかに、王都が浮き足立っている」
「いいのでしょうか、これは?」
「あまりよくないがなあ。しかし良い託宣が下った直後とは大体こんなものだ」
「………」

 たしかにそうです。例えば「今年は豊作だ」というような託宣が下った直後などは、むしろもっと目に見えて王都民がはしゃいでいたりもします。あらゆるところでお酒を振るまい、乾杯音頭が取られているのを、わたくしはある年に見たことがありました。

 問題なのは、今回の託宣が「よいもの」ではないということ。

「不安の裏返し……?」
「そうかもしれん。あるいは、絶対に大丈夫という無根拠の確信だ。今回は宮廷が後者を煽っているからな」

 宮廷が。その単語が、重くのしかかります。
 わたくしは無言になって歩き続けました。

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