託宣が下りました。

 四阿(あずまや)のそばにある木々を、小鳥の気配が揺らしています。
 テーブルはちょうど四人で囲めそうな大きさです。誰からともなく座ろうとすると、

「俺は席を外そうか」

 そう言って、騎士が一歩退きました。「女同士、水入らずのほうがいいだろう。雨が降る前には迎えに来る」

「え? でも騎士――」
「ヴァイス様! それならぜひこっちのお荷物もお連れください!」

 シェーラが嬉々としてレイリアさんを押し出します。
 騎士は大真面目に応えました。

「いや、その荷物は俺には重すぎる」
「いえいえ小さいので軽いですよ。口がだいぶ悪いだけで」
「か弱い乙女をつかまえてなかなかひどいですねあなた方」
「あんたのどこがか弱い乙女なのよどこが!」

 ……などというやりとりがありつつ……

 結局レイリアさんはシェーラの護衛を理由に頑としてその場を離れず、騎士だけが手を振ってどこかへ去っていきました。

「はあ……」

 四阿の椅子に座り、シェーラが大きくため息をつきます。

「ヴァイス様がいないと寂しいわね」
「何ですかお嬢様。アルテナ様の恋敵に立候補ですか」
「違うわよ。ヴァイス様って、いるだけで何だか空気が違うでしょう?」
「………」

 そうなんですシェーラ、と心の中でわたくしは大きくうなずきました。

 口を開けばもちろん、口を閉ざしていてさえも場を支配しかねない存在感。今こうしていなくなってみるとなおさら実感できます。

 ……寂しい、という感情を残った者の心に生み出して。

 つい黙りこくって、沈黙の中に身をゆだねてしまいたくなります。彼のことを考えていたくなる――。

(いけない。話をしなくては)

 せっかくシェーラに会えたのです。聞きたかったことを全部聞かなくては。
 椅子に座ったわたくしは、向かいのシェーラを見つめました。

「元気そうで本当に良かったわ、シェーラ。手紙の返事がないから心配していたのよ?」
「……手紙の返事?」

 シェーラがきょとんとします。「それって、サンミリオンに行ってからすぐにくれた手紙?」

「そうよ」
「それならすぐに返事を出したわよ。そろそろそれの返事が来ないかなって期待していたから、アルテナ自身が来るって聞いてびっくりしたのよ?」
「返事を出した?」

 今度はわたくしがきょとんとする番でした。

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