託宣が下りました。
「………」
わたくしはその話をシェーラたちにするかどうかで迷いました。変に伝えてしまっては、巻き込んでしまうかもしれない。
スライムに襲われたときのことを思います。
あれがもっと強力な魔物だったなら。騎士が来るのがもう少し遅れていたなら。
そしてそれに、シェーラたちを巻き込んでしまったとしたなら。考えるだけで身震いがするのです。
「アルテナ?」
「あ……何でもないの」
わたくしは慌てて笑顔を取り繕いました。「それにしてもシェーラ、星の巫女に選ばれていたなんて驚いたわ」
するとシェーラは、苦く笑いました。
「違うのよ。私は星の巫女に抜擢されていないの」
「え?」
「今回の星祭りはね、星の巫女の託宣を行わない方向でいたの。何故かって、誰も巫女になりたがらなかったのよ。アルテナのような目に遭いたくない――って」
「―――」
「でも私は御声拝受のときに星の声を聞いてしまった。それをアンナ様に伝えて、アンナ様が王宮に伝えて――ほら、内容が内容でしょ、ほっとくなんてできなかったから。そしたらあれよあれよの間にこの騒ぎよ」
つまりシェーラの託宣は『星祭りの夜』には行われてはいないのです。シェーラの託宣が先にあり、それを知った王宮が急遽星祭りを行った――
その急ごしらえの星祭りの場で、シェーラは託宣が下ったふりをしたというのです。
「ほんと、馬鹿げてるわよね。どうしても星祭りでの正式な託宣であってほしいというのよ」
シェーラは自嘲気味に笑いました。
わたくしは胸が苦しくなりました。周囲がどうしても正式な託宣であってほしいと望んだのは――正式な託宣の神聖さを取り戻すためでしょう。
そしてその神聖さを穢してしまったのは、他ならぬわたくしの託宣なのです。
「……わたくしのせいで」
「違うわ」
わたくしのつぶやきを、シェーラは即座に否定しました。
「アルテナの託宣のせいじゃないわ。問題は、その託宣を後になって否定した王宮よ。おまけに今回無理やりに正式な託宣を作り出したりして――。穢しているのは王宮だわ」
「ですが、おかげで民衆の間で託宣の重要性は蘇りました」
レイリアさんがおごそかに言い添え、シェーラは黙り込みました。
豊かな髪をしきりに指でいじっています。イライラしているときの、彼女の癖です。