託宣が下りました。
志の問題なのよとわたくしは主張しました。
「修道女は清廉潔白、私利私欲などに流されてはいけない。隣人を愛し、広く人々のために心を尽くす――」
「それはよく分かっているわ。でもアルテナ、それじゃあどこが駄目だって言うのよ」
「わたくしは」
言葉が止まりました。
唇を強く噛みます。どうしてこんなことになってしまったのか。修道女を志したときからずっと、その道だけを追い求めていたつもりだったのに――。
でももう遅い。感情は生まれてしまった。
「……わたくしは、個人として人を愛してしまったようだから」
………。
「きゃああああっ」
シェーラの黄色い声が周囲の木々までざわめかせました。驚いた小鳥が一斉に飛び立っていきます。
「お嬢様、お静かに」
「ごめんでも、ああ、なんて素敵なのアルテナ!!!」
立ち上がり両手を組み合わせ、夢見るようにうっとりとするシェーラ。
あまりのはしゃぎように、わたくしまで一歩引いてしまいそうです。椅子があるので無理ですが。
「……あのねシェーラ、これはいい話ではないのよ?」
「何を言っているの? だって相手はヴァイス様でしょう? これはもう星の神のお導きだわ!」
「き、騎士だなんて言ってないわ」
「あら違うの?」
「―――」
「ほらやっぱり。ああ、なんて素敵な恋の花……!」
……シェーラはちょっと恋物語に夢を見すぎなのではないでしょうか。マクシミリアン様との関係の反動かもしれません。
「これのどこが素敵なの? 無神経に言い寄られたあげくよく分からないうちに気持ちを動かされただけ、みたいな話よ……」
「アルテナはそんな恋は嫌なの?」
「嫌もなにも、起こってしまったことは仕方がないわ」
「ほら! そんな恋でも受け容れてるんでしょう? やっぱり素敵よ!」
「………?」