託宣が下りました。
 言うなりこちらまでつかつか歩いてくると、がしっとわたくしの肩を掴み、

「うむ、話には聞いていたが健康そうなよい娘さんだ。どうだねアルテナさん、ぜひ私の実験体にならないかね?」
「!? い、いえ、遠慮します――」
「そこを何とか。家族になるよしみで。きっと君の体を強化してみせるから!」
「!?!?!?」

 強化って何ですか。

 顔をぐっと近づけられ、わたくしは赤くなったり青くなったりしました。
 騎士に似ていないというのは訂正です。そっくりです、強引さが!

「親父殿! やめてくれ、巫女をそういう風に扱うのは!」

 慌てて騎士がわたくしからお父上を引きはがしました。そしてわたくしをかばうように前に立ち、

「巫女は俺の妻になる大切な身だ。たとえ親父殿でも無体は許さない」

 その背中の頼もしいこと。このときばかりはわたくしも、騎士に感謝をしました。
 ……ふだんわたくしに無体を働いているのは、騎士のほうなのですけれど。

「ほほう。お前さんずいぶん気に入っているな」
「当然だ。そうでなきゃ妻になど望まない」
「星が選んだ妻だろう?」

 お父上はにやにやとしていました。対する騎士ヴァイスは――
 わたくしに背を向けていますが、渋面を作っているのが気配で分かりました。

「託宣はきっかけのひとつに過ぎないさ。気に入らなきゃ、託宣だろうが断る」

 それより、と騎士ヴァイスはわたくしから籐のかごを奪うと、お父上に差し出しました。

「巫女殿は修道院の遣いで来ている。これに値をつけてやってくれ」
「おお、ミツカド草か」
 お父上は弾むような声音で言いました。「修道院で育てた魔力草は出来がいい。こちらも助かるんだよ」
「………」

 わたくしは複雑な思いで、にこにこしているお父上に頭を下げました。

 ――修道院は薬草を売る際に、条件を設けています。

 『人を傷つけるための道具には使わないこと』と。

 ですがここは魔術具店です。魔物対策はともかく……古くは戦場で主に使われていたのが魔術具です。
 こんな条件をつけるのは、ある意味で滑稽でしょう。

「あの……無茶ばかりお願いしまして、申し訳ございません」

 わたくしは改めて深く頭を下げました。
 本来こちらは条件をつけられる立場にありません。薬草を買い取ってくれる相手は限られていますから。
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