託宣が下りました。

 なぜ修道女を志すようになったのか――。
 何も男性が苦手だったから、というだけの理由ではありません(それもたしかにあったのですが)。

 直接の原因は、何と言っても昔見た修道長アンナ様のお姿です。

 あれはわたくしがまだ十になったかならないかのときのこと。
 当時、星の巫女であったアンナ様や他の修道女の方々が、サンミリオンの孤児院を回りに来たことがありました。

 町長になる前の父は、そういった施設との連絡係をしていた時期がありましたので、そのつながりでわたくしはラケシスとともに孤児院に遊びにいっておりました。

 そのときに、アンナ様たちと偶然居合わせたのです。

 孤児にはもちろん、ただ遊びにきただけのわたくしたちにも優しく接してくださったアンナ様――。


 『人を恨まないこと。すべて自分の心ひとつ』と穏やかに子どもたちに説くその姿勢。


 はしゃいでしゃべり続ける子どもであっても、いなくなった親への思いをぽつぽつ語る子どもであっても、何ら変わることのない優しい笑顔でじっと耳を傾けていらっしゃった。そのたたずまいがわたくしの胸に、強く焼き付いて。

 そして長じるにつれ、あの振る舞いが簡単にできることではないことが分かっていくとともに、わたくしの心に大きな憧れが形となって住み着きました。

 ああいう女性になりたい――。

 まぎれもない、アンナ様がわたくしの理想。

 そしてアンナ様は、何度も星の巫女を務めたことのある方です。修道女の最高位と言ってもいい、星の巫女というお役目――。

 理想の姿を追求すれば星の巫女に行き着く。わたくしはやがて、星の巫女を目指すようになりました。
 王都に上がり修道女になってたった二年で星の巫女へ抜擢されたのは、わたくしにとって文字通り夢のような話だったのです。

 あのころはまだ、自らの託宣で自らの人生が狂うとは、思ってもみなかったから。

「わたくしは……どうしたらいいのか、ずっと悩んでいるの」

 視線を落とすと自分のてのひらが見えます。心なしか、震えている気がする自分の。

「星の巫女はもう諦めているわ。でも修道女でいたい気持ちが消えないの。この二年、本当に満たされていたから」
「……たしかに、幸せそうだったわよね。アルテナ」

 神妙な表情でシェーラがうなずきました。

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