託宣が下りました。
「ヴァイス様と一緒にいて、幸せとも限りませんしね」
レイリアさんのぼそりとした言葉が、さりげなくわたくしの胸に突き刺さりました。シェーラが慌ててレイリアさんの肩を小突き、
「ちょっと! そこは幸せに決まってるじゃない」
「そうですか? あんなに問題行動が多い人が夫では、大変なことの方が多いと思いますが」
「そっ、そうかもしれないけど! それを上回る幸せがあるわよ! あんなにアルテナを愛してくださっているんだし――ねえ?」
いえ、ねえって言われてもシェーラ。わたくしのほうが返答に困る。
「あ、愛してくださっているかしらね?」
しどろもどろにそんなことを口走ってしまうと、シェーラが「当然じゃない!」と息巻きました。
「これまでのヴァイス様を忘れたの!? 本気で好きでいてくれなくちゃ、できるわけがないじゃない!」
「……寝室に忍び込もうとしたり、修道院にイノシシを持ち込もうとしたり、夜中に他人の家に忍び込むことを勧めたり――」
「アルテナ、そこは忘れよう!」
都合がよすぎます。
ですが……騎士に惹かれるにつれて、そういった彼の問題行動の不愉快さがだんだん薄れていっているのも事実です。わたくしの心はなんと単純なことか。
「大体、ヴァイス様ほど行動で示そうとしてくれている人もなかなかいないわよ? ちょっと価値観がおかしいだけで」
「価値観がおかしいのは問題じゃないかしら……」
「い・い・の! 悪人じゃないんだから」
「そうでしょうか?」
冷たい水を浴びせるように、レイリアさん。
シェーラがはたと動きを止めました。まじまじと隣のレイリアさんを見ます。
「……なに言ってるの? ヴァイス様が悪人だとでも言うの?」
「悪人、とは少し違いますが」
レイリアさんはシェーラを見、それからわたくしを見ました。
「お二人ともこんな噂を知りませんか。ヴァイス様は王女エリシャヴェーラ様に言い寄られていると」
「そ、それは」
シェーラが目に見えて動揺しました。
わたくしは驚きました。シェーラ、まさか――
「知っていたのシェーラ?」
「……まあ……」
「知っていたなら何でわたくしに教えてくれなかったの?」
つい責めるような口調になってしまいました。だってわたくしだけ知らなかったなんて、あんまりじゃないですか。