託宣が下りました。
シェーラは少しだけ困ったような顔をしました。
「だって、言えるわけないじゃない。私はアルテナとヴァイス様にうまくいってほしかったんだもの。もしも話していたら、アルテナはますますヴァイス様から距離を取ったでしょう?」
「………」
「言わなかったのは謝るけど、でも――」
「そこはどうでもいいんですお嬢様。問題はここからです」
言いかけたシェーラを遮って、レイリアさんはわたくしを見据えました。
まるで、覚悟を問うような目でした。これから言うことを、聞く気があるのか、と。
「……教えて。レイリアさん」
わたくしはそう応えました。乾ききってひりつく喉をごまかしながら。
「ヴァイス様はエリシャヴェーラ様の求婚にほとほと手を焼いているんです。何しろ相手が王女ですからね、スケールも大きいし無茶も多い」
何だか想像がつきます。ラケシスの話では、エリシャヴェーラ様に遠慮という言葉はないそうですから。
「ある時には『この国をあげる』とまで言ったそうです。王太子があのていたらくですから、あながちはったりでもない。ヴァイス様は本気で困ってしまった」
レイリアさんは何を言おうとしているの?
嫌な予感が、こつ、こつと静かな足音を立てて迫り寄ってきます。
「ところがそんなある日、とある託宣が下りました。ヴァイス様はその託宣を聞いた瞬間、考えついたのです。これで王女の求婚を拒否できる――」
「―――!」
バン! とテーブルを激しく叩く音。
シェーラが青ざめた顔で立ち上がっていました。テーブルに叩きつけた手が震えています。
「何てことを、レイリア……!」
「ちまたでの噂です。私が言ったんじゃありません」
レイリアさんは涼しい顔。相変わらず堪えない人です。
「……本当にそんな噂があるの?」
「ありますよ。誰かに聞いてみたらいかがですか、アルテナ様」
「………」
「た、ただの噂よ。真実じゃないわ」
シェーラは立ったまま拳を握りました。何かを振り切ろうとするかのように頭を激しく振り、
「絶対違うわ! だって偽りであんなにしつこく迫ったりできない!」
「しつこいって認めるんですね」
「そんなことはどうでもいいのよあんたはあああっ!」
レイリアさんの両肩をがっしと掴んでがくがく揺さぶるシェーラ。わたくしの分もお願いします。