託宣が下りました。
さすがの騎士も、わたくしの様子がおかしいことに気づいたようです。顔を覗き込み、怪訝そうに首をかしげました。
「どうした? 気分が悪いのか?」
「いいえ」
ああ、たったこれだけの言葉を発するのが何と難しいことでしょう。
やがて声を出すことを諦めたわたくしは、騎士に向かって顔を上げ、あいまいに微笑みました。
「……本当に調子が悪そうだな」
勘違いしたのでしょうか、騎士は真顔になりました。「早く建物に入ろう。じきに寒さも強くなる」
「………」
「シェーラ殿、悪いがもうお開きにさせてくれ。またじきに連絡するようにするから」
「手紙は届くのでしょうか」
レイリアさんの問いに、「大丈夫だ」と騎士は軽く笑います。
「今日の連中によっく言い聞かせておいたからな。俺からの手紙なら大丈夫だ」
「まあ、元々勇者一行と喧嘩したいわけじゃありませんしね、王宮も」
納得したように言って、レイリアさんが腰を上げました。「いきましょうシェーラお嬢様」
「うん……」
シェーラは立ったまま、じっとわたくしを見ていました。
わたくしはシェーラを見返しました。
二人の間に、二年という、共に過ごした時間の深さが横たわっていました。ただ見つめ合うだけで相手を労る、そんなことも可能なほどに。
やがてシェーラはテーブルを回り、わたくしを強く抱きしめました。
「アルテナ。幸せになって」
「シェーラ……」
シェーラはわたくしを抱きしめたまま、ギン! と騎士をにらみつけました。
「……アルテナを、く・れ・ぐ・れ・も! よろしくお願いします、ヴァイス様!」
「んんん?」
目を白黒させる騎士。わたくしはぷっとふき出しました。
ようやく自然にこぼれた笑顔。わたくしたちはそれを贈り合うように顔を見合わせ、笑い合って――。
そして、どちらからともなく手を放しました。再び会えることを、無言の中に約束して。
シェーラがレイリアさんを連れて修道院の方向へ帰っていきます。
それを見送っていると、ふいに道の両側から二人の男性が姿を現し、こちらを一瞥するとシェーラたちの後を追っていきました。
騎士が一度捕まえたはずの彼ら。たぶん騎士は必要に応じて彼らを解放したのでしょう。
わたくしは騎士に尋ねました。
「シェーラはなぜつけられていたのですか? わたくしに会うから?」