託宣が下りました。
磨き抜かれた壁や調度品。騎士の家としては意外なほど美しく保たれています。異国のものもふんだんに取り入れながらも、決して部屋のバランスを失っていません。以前住んでいた貴族がよほど趣味のいい人だったのか、それとも今の使用人に品のいい人がいるのか……(間違っても騎士の趣味とは思えませんので)
部屋はいくつあるのでしょうか、数える気にもなれません。
雨雲が近くなり少し暗くなったせいか、使用人さんが燭台に火を入れています。壁に映る炎の照り返しさえ美しい。見たことの無い観葉植物がその緑の葉をつやつやと光らせ、たっぷりと世話をされていることを誇っています。
右を見ても左を見ても……どこを見ても手抜きの跡などまったく見えないのです。いっそ目がちかちかするほどに。
「き、騎士はここで暮らしているのですね」
わたくしが呆然としながら言うと、騎士は困ったように唸りました。
「まあそうなんだが……」
「……? 何ですか?」
「……あまり帰ってきていないんでな。使用人たちの好きにさせてる。そうしたらいつの間にかこんな家になっていてな」
「………」
「そこの男、ウォルダートと言うんだが、趣味はすごくいいが無類の掃除好きなんだ。他の使用人もなぜかみんなそういうやつらでな……目がちかちかしてくるだろう?」
「!」
目がちかちかする。まさに今わたくしが思っていたことです。
同じものを見て同じ感想を持つ――。この、普段まったく理解不能な騎士を相手にもそんなことがあるなんて。
どうしよう。……嬉しい。
そんな風に思った自分が恥ずかしくて葛藤しているわたくしをよそに、ウォルダートさんがすまし顔で口を開きます。
「心外です。私どもは旦那様のおため、できることを最大限させていただいているのみ」
「いいやお前は絶対自分の趣味だ。まあ悪い趣味ではないがな」
「滅相もない。国でも一等有名な旦那様が家に帰ってくるたび片身の狭そうな顔をなさるのを見るのが楽しいだなんて、使用人一同誰も思っておりませんよ」
「前言を撤回する。お前ら全員趣味が悪すぎる」
騎士が低い声を出すのが、気に入らない相手を威嚇する犬のようで、わたくしはぷっとふき出しました。騎士をやりこめられる人たちがいるなんて、世の中は広いものですね。
くすくすと笑っていると、騎士がわたくしを見て表情を和らげました。