託宣が下りました。
「気に入ったか?」
騎士はわたくしのそばまでくると、わたくしと同じように本棚を撫でました。「勉強好きのあなたの部屋なら、本棚は欠かせないだろうと思ってな。もちろん書斎も別に作ってもいい」
わたくしは思わず騎士を見上げました。あまりのことに、混乱して舌がもつれます。
「そ、そこまでしていただくわけには」
「何を遠慮してるんだ。ここはあなたの家になるんだぞ? 少しでも自分の住みよいようにするのがいい」
「わたくしの……家」
つぶやいてみても現実味がありません。戸惑いだけがうずまく胸を抱えて、わたくしはしつこく部屋を見渡します。
どこを見ても、わたくしの趣味に合わせたとしか思えない部屋。まばたきをしても消えることがありません。
「あなたが、手配してくださったのですか?」
「ああ」
騎士は即答しました。それから、
「……まあ、アレスやらカイやらに散々叱られながら修正はしたがな」
あごに手を当ててうなるように言います。
「最初は俺が留守でも寂しくないように俺の彫像を置こうと思ったんだが却下された。そんなむさ苦しいのはいらないと」
「………」
「では魔除けに熊の剥製を置こうかと言ったら却下された。巫女が恐がると」
「………」
「明るい色のほうが元気が出るかと思ったから本棚やテーブルを金塗りにしようと言ったら殴られた。お前は巫女をそんなに悪趣味に思っているのかと」
「………………」
「俺の趣味をなじられるのはともかく、巫女のことを理解していないと言われるのは悔しかったのでな。そこから必死で考えたんだ。最終的にはアレスもカイも黙った。当たっただろう?」
そう言って、微笑んだ騎士。
わたくしは胸がいっぱいになりました。この人は本気でわたくしを喜ばせようとしてくれた――。
以前は、この人のやることなすこといちいち気に障ったものでした。わたくしを喜ばせようとしているらしいのに、どこか彼の考えを押し通すようなところがあって。
ただ、時が経つにつれて彼は、わたくしの考え方を尊重するようにもなってくれました。
強引すぎる人ですが、根っからわたくしの芯を潰そうとすることはなかった。いつからかわたくしもそのことに気づいて。
この部屋は、その象徴。
そう思うと胸にじんとした感動がしみていくのです。