託宣が下りました。
「精神に優劣はありません。騎士の考えも尊いものですよ」
「そうか?」
「そうです。そもそもわたくしだってそんなに立派な考えで修道女になったわけではありませんから」
元はと言えばアンナ様を追っただけ。人の真似事を志しただけ。
そう告げると、騎士はむっとしたような顔をしました。
「真似事呼ばわりはどうかと思うぞ。若いころはそうやって始まるものだろう。道はそこから選び取っていくものだ」
「騎士もそうだったのですか?」
「俺は好きに生きてきたが、たぶんどこかで誰かの真似をしている。自分のやり方が唯一無二だなどと思っていない」
「………」
この人が誰かのまねをしているのだとしたら、ぜひその相手を知りたいものです。絶対近づきたくありません。
わたくしはもう一度微笑み、視線を騎士から人形へと戻しました。
その中にひとつ、鳥がいました。大きく翼を広げた鳥。今にも空に飛び立ちそうな――。
そっとそれを手に取ってみます。軽い土人形。けれどそこにこめられた想いの重さはどれほどでしょう。
我知らず、唇から言葉が生まれました。
「……わたくしは昔から取り柄がありませんでした。ラケシスのように強くもないし、容姿も平凡ですし、頭がいいわけでもなかった。ずっと気にしていたんです」
「取り柄がない?」
騎士が、うーん? と大きく首をかしげます。
「取り柄。取り柄とは何だ」
「哲学的な話ではありませんよ。要するに、わたくしは誰かの役に立ちたかったんです。でもそのための能力が足りないと漠然と思っていた――」
そんなときに、アンナ様と知り合いました。
あれは本当に大きな出会いだったと思います。人生を決める出会い。彼女の立ち振る舞いと、そして言葉に、わたくしは救われたのです。
「アンナ様は仰いました。〝人を助けられない人間なんていないのよ〟」
大切な言葉は紡ぐだけで胸が熱くなる。心が、アンナ様と知り合ったばかりの幼き日へと戻っていく。
飛べなかった鳥が初めて翼の使い方を知ったかのように、世界が変わったあの日。
「わたくしはその言葉を信じています。そして実行してみせようと思ったんです」
修道女になるのはその一歩でした。
今すぐには無理でも、いつか必ずと心に決めて修道院へ渡った二年前。
……そんな人生を一生続けていきたいと、明確に思っていたはずの。