託宣が下りました。
「………」
どちらからともなく口をつぐみました。
騎士が、つまんでいた人形を棚の上に戻します。ことり、と鳴った音が、静かな部屋に妙に大きく響きました。
「……俺は」
先に口を開いたのは彼でした。
わたくしは彼に顔を向け、耳を澄ませました。
すべて聞きたいと思いました。
話の通じない人だなんて思っていた過去。そんな勘違いを償いたい。
彼の考え方を、もっと知りたい。
「俺は別に、あなたからあなたの望んだ人生を奪いたいわけじゃないんだ」
ぽつぽつと、彼らしくない細かな声が落ちます。
弱気そうな声にも聞こえました。
「だが――修道女のままでは、隣にいてもらえない。だから」
「はい」
応えるように、相づちを。彼の言いたいことは分かった気がしたのです。
彼は目をしばたいて、少し笑いました。
「……あなたが欲しい。俺のそばにいては失うものが多いのなら、その分俺が新しく与えてみせる」
大きな手が伸び、わたくしの頬に触れます。
ぴくりと体が震えました。緊張したのは不安か、それとも期待だったのか――
顔が近づき、唇に触れるだけのキス。
そのままわたくしの顔を両手で包み込み、至近距離でわたくしの目を見て、彼は囁きました。
「あなたのよいところなら俺も知ってる。修道長殿には負けない」
わたくしはくすっと笑いました。
「そんなところでアンナ様と対抗しなくてもいいんですよ?」
「俺を好きだと言ってくれるか?」
「………」
その一瞬、脳裏に去来したのは彼を拒否し続けてきた自分の姿。
最初から好きであったなら良かったのに。彼を無駄に傷つけずに済んだのに。
……わたくしに、修道女の夢がなかったなら良かったのに。