託宣が下りました。
やがていつになく抑えたトーンの声が、そのことを告げました。
「アルテナ。俺はじきに魔王討伐に出る」
「……っ」
一瞬にして体から熱が消えました。代わりに強くなった鼓動が、痛いほど胸の奥に響いています。
「今、王宮が必死になって魔王の現れる前兆を探してる。それが見つかり次第、俺たちは王都を出る」
――半年以内。シェーラの託宣は、そう告げたはずです。
ということは騎士は、遅くとも半年後には、王都を出て行くことになる――。
一度も王都に帰ってこないわけじゃないが、と彼はため息とともに言いました。
「魔王がどこに現れるかによる。遠ければ、王都にはほとんど戻れないだろうな」
「……ヴァイス様」
騎士は少しだけ体を離し、わたくしの目をじっと見つめ、
「だから、頼みがある」
「え?」
ふいに。
体がぽんと押されました。わたくしは訳も分からず背後へ倒れ込みました。そこにあったのは、大きすぎるベッド――。
きしむ音さえ聞こえない上等なベッド。深く体が沈み込み、驚くわたくしの頭上に人影が落ちます。
騎士はわたくしの上に覆い被さり、顔を近づけました。夕焼け色の光が、わたくしの瞳に強く差し込みました。
「……俺が出て行くことになるその前に。俺と子を成してくれないか」
騎士の顔の向こう側に、白い天井がぼやけて見えました。
何かを言おうとして開いた唇を、騎士の唇がふさぎます。下唇を噛み、甘い刺激でわたくしの言葉を封じてしまう――。
やがてその奥へと入り込んできた熱を、わたくしは拒絶することができませんでした。舌をからめとられ、唾液がつうと伝わり――その熱さに驚いて呼吸を忘れたわたくしは、水をなくした魚のようにあえぎました。
「……、ぁ……っ」
吐息はやがて首筋に下りました。修道服の高い襟を指でずり下げ、あらわになった肌に吸いつかれると、触れられてはいけない場所に触れられたような気がして体の奥がじんとうずきます。
指先でわたくしの唇をなぞりながら、一方で顔をどんどんと下へ――。
彼の動きに反応して鼓動が強くなっていく。その音を聞かれるのが恐くて、わたくしは身をよじりました。
「待って……待って、お願い」
彼は顔を上げました。
わたくしに向けた視線が、寂しそうに揺れていました。
「……そんなに、俺が嫌いか?」