託宣が下りました。

 違う――。
 わたくしは弾けるように声を返しました。

「いいえ! いいえ、わたくしは」

 しかし、それ以上言葉が続きません。どうしても、大切な一言が言えない。
 彼はわたくしの修道服の胸元にキスをしました。そして、

「俺にはどうしたらあなたが納得するのか分からん。だが分かってくれ、俺は遊びで言っているわけではないんだ。あなたとの子がほしい。魔王討伐にかかる時間を待ってなどいられるものか」

「―――」

 騎士の大きな手が、修道服の上からわたくしの体をなでてゆきます。
 冬の修道服です。布地はかなり厚いはずなのに――愛撫の感触はなぜか鮮明で。
 優しく触れられている。そのことが鮮明で。

 けれど、触れられれば触れられるほど体はこわばっていく。
 彼の手がスカートの中へと侵入しようとしたとき、わたくしはとっさにその手を止めました。

「駄目……駄目、です。ヴァイス様」

 その声が弱々しいことは自分で分かっていました。彼の昂ぶりを止めることなどとてもできそうにない――。

「……どうしても駄目か?」

 そう言った彼の声ににじむ落胆の響きが、あまりにも強くわたくしの鼓膜を打ちました。

(……どうしても駄目?)

 自分で自分に問うてみても、答が見つかりません。
 いきなりすぎると思ってみても、はやる彼の気持ちは分かる気がして。

 魔王の討伐に出る――。そのことの重みを考えたならば、わたくしのほうこそ恐ろしい。

 彼が行ってしまうことが恐ろしい。

 せめてその前に。彼のものになってしまえたらと、心のどこかで囁く自分もたしかにいる。

 だけど彼を受け入れてしまったならその瞬間に、わたくしの夢は消える――。
 
 夢が消えたその先で、わたくしはどう生きればいいの?
 彼はじきに行ってしまうというのに。
 
「アルテナ?」

 騎士が驚いた声を出して、わたくしの目元を指で拭いました。
 いつの間に泣き出していたのでしょうか――
 わたくしは騎士から顔をそらしました。こんな顔は見せたくなかったのに。

「すまん。恐かったか?」

 おろおろと騎士は体を浮かせました。大丈夫か、悪かったと何度も聞こえる彼の声。
 泣きたくなんかなかった。彼に罪悪感を抱かせることは目に見えていたから。

 わたくしは腕で目を覆いました。

 何かを言わなくてはと思ったとき、口をついて出たのは、とりとめのない疑問。

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