託宣が下りました。
「ああ、元気になったな。良かった」
「この、――」
「愛してる。笑っているあなたも怒っているあなたも真面目に悩んでいるあなたも、いつか全部俺のものになってくれ」
「―――」
「もちろんできれば今すぐのほうがいいが」
この人は――
どこまで本気で言っているのでしょう? いつだってふざけているようにしか見えないのに。
いまだ「好き」の一言さえ言えないわたくしを、愛情と夢を天秤にかけて答の出せないようなわたくしを、それでも愛しているというのでしょうか?
――ここまできて、「いつか」と猶予をくれるだなんて(その後に本音ももれていましたが)。
それはわたくしにとってあまりにも甘美なこと。
抵抗する気だったのに、もっともっと彼の言葉を聞きたくなる。もっと言ってほしくてたまらなくなる。
(わたくしはずるい)
一方的に愛情を甘受するだけでは駄目。こっちから、彼に伝えたいことは?
壁掛け時計が時間の経過を報せます。
夢から醒めたように、騎士が苦笑しました。
「このまま一緒に昼寝でもするか」
わたくしを抱きしめたままベッドに転がる騎士。間近からわたくしの顔を見つめる彼の夕焼けの瞳に、胸が切なくうずきました。
言わなくては。修道女の夢も子を成すことも置いておいて、今たったひとつの事実を言わなくては。
「あの……ヴァイス様」
「ん?」
「その……」
――わたくしは。
意を決して口を開いたそのとき。
ノックの音が聞こえました。
騎士が眉をひそめて体を起こしました。「邪魔をするなと言ってあったのに」ぶつぶつと文句を言ってから、「何だ!」と声をかけます。
わたくしは慌てて起き上がると騎士から離れ、乱れていた衣服を直しました。
ドアの外に立っていたのはウォルダートさんでした。うやうやしく頭を下げ、それから小首をかしげます。
「このまま申し上げても?」
どういう意味でしょうか。「構わん」と騎士がのっそり体を起こしながら言います。
「では申し上げますが――エリシャヴェーラ王女殿下からのお手紙です」
「………!」
わたくしは――。
その一瞬をはっきりと見ていました。
騎士が、明らかに動揺したのを。刹那にわたくしを見てから、目をそらしたのを。
騎士は立ち上がりました。そして、ウォルダートさんに向かって歩きながら「よこせ」と手を差し出しました。