託宣が下りました。

「………!」

 わたくしはさっと顔を伏せました。
 もうお化粧はしていないのです。まさかこんなところに顔を知っている人がいるなんて。

 妙な緊張感が、わたくしと女将さんの間に横たわりました。

 視界の端に見えていました。女将さんは困っているような、でも好奇心を抑えきれないような、そんな顔をしたのです。

「ど――どうしてわたくしの顔を?」

 思わずそう()いてしまいました。

 変装をする、と言われたとき、わたくしはてっきり、普段からわたくしを知っている人から隠れるためだと思ったのです。

 それ以外の一般の方が顔を知っている可能性なんて、考えていませんでした。星祭りは衆人環視の中で行われますが、輪の中央に近い人は身分の高い人で固められており、民は遠いはずなのです。それなのに――。

 女将さんは、「何を当然のことを」とでも言いたげに首をかしげました。

「そりゃあ知っているわ。星の巫女は似姿が出回るもの」
「似姿……」
「隣の家のヴィッキ坊ちゃんなんか、代々の星の巫女の似姿や似顔絵を集めるのが趣味よ。……星の巫女なのに知らなかったの?」

 愕然としました。絵のモデルになった記憶などありません。

 知らないところで、色んなことが進行している――。
 いくら行動範囲がほとんど限られていたとはいえ、わたくしはこんなにも、都の人々のことを知らずにいたのでしょうか。

 言葉を失ったわたくしを女将さんはうかがうようにじっと見て、

「ええと……そうだ、ヴァイス様のお宅はここからそう遠くないよ。連絡を入れようか」

 彼女は完全に親切のつもりで言ったのでしょう。ですが――。
 わたくしは反射的に強く首を振りました。

「いいえ、それは結構です……!」

 すると、ますます好奇心にきらめく瞳にぶつかりました。

「ヴァイス様から逃げているというのは本当なのね。いったいどうして? もったいない」
「………」

 何とも答えられずに口をつぐんでいると、女将さんは何かを思い出したように手を打ち、

「そうそう、託宣を取り消させたのはあなたが王宮に頼み込んだことだっていうのは本当なの?」
「は……?」

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