託宣が下りました。
 女の子は十歳そこそこでしょうか。顔立ちは丸くとてもかわいらしいのに、わたくしを見つめる目が据わっています。

「星の託宣は神聖なもの……」

 女の子はドアの陰に半分隠れたまま、ぶつぶつと独り言のように言いました。

「利用するものには天罰が下る……」
「……え、えっと、あの」
「我は天にかわって罰を下す者。偽巫女にはふさわしき刑を」

 天罰? 偽巫女?

 何だか……最近同じようなことを何度も聞いているような、いないような。

「痛っ」

 思い出しかけて、すぐに思考が四散しました。ここに来てねずみの爪がわたくしの足を引っ掻いたのです。

 わたくしは反射的にねずみを蹴飛ばしてしまいました。チィ! という鳴き声と、生き物の感触がしました。罪悪感やら恐怖やらでもう訳が分かりません。

「お願い! このねずみを何とかして……!」

 わたくしは女の子に向かって叫びました。どこの誰だかも分かりませんが、もうなりふり構ってはいられません。
 ……とりあえず騎士本人ではありませんし。

「反省、してる?」

 女の子はなおも繰り返します。

「は、反省って何のことですか?」
「偽託宣を下した罪。巫女という立場を利用した罪。そして勇者の片腕たる騎士をだました罪」
「――」

 ……勇者の片腕である騎士を……
 『だました罪』?

(騎士ヴァイスのこと?)

 勇者一行に『騎士』の肩書きを持つ者は彼以外におりませんから、きっとそうなのでしょう。

 でも……だます?

(わたくしが騎士を?)

 そうでした。託宣を下してからこのひと月、わたくしはずっとそんな中傷にさらされているのです。

 あの託宣は嘘なんかじゃない。そう叫んだとしたら――今度は困るのはわたくしです。何しろ、託宣に一番反抗しているのは、他ならぬわたくしなのですから。

 だから、言われるままになっていました。仕方がないと諦め始めていました。託宣が間違いであったらと、むしろ願ってきました。

 ですが……

 嘘の託宣と疑われた上で、この身を害されるというのなら、話は別です!

「わたくしは偽託宣を下した覚えはありません。巫女の立場を利用などしていません。そして騎士ヴァイスをだましてもおりません」

 だから、反省などできません。
 思い切って言ってみると、女の子は目に見えてふくれっ面になりました。とても子どもらしい顔で。
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