託宣が下りました。
何より――
「院長せんせ、このジュースおいしい!」
マリアンヌさんが持ち込んだ飲み物を片手にはしゃぐ子どもたちの頭を、「そーか良かったね」と片手でぐりぐり撫でる院長様の表情は、慈愛に満ちていました。
まるで、そう、わたくしの憧れたアンナ様のよう。
そもそもここは院長室なのですが、客がいようと扉は開きっぱなしで、ひっきりなしに子どもが入ってきます。そう言った垣根のなさに、わたくしは感じ入りました。
「忙しいと思ったから連れてきたの。この子にも何かやらせてあげてよ」
とマリアンヌさん。
院長様はわたくしをじろりとにらみます。
わたくしは負けじと院長様を見つめます。
「何でもやります。お手伝いさせてください」
子どもの相手は大好きです――そう言うと、院長様は鼻を鳴らしました。鋭い眼光が、きらりとわたくしを射貫くよう。
「あんたがどんな都合でここへ時間つぶしに来てるかは、あたしにとってはどーでもいいから聞かないけどね。ひとつ言っとくよ――子どもらの前では子どもらのことを第一に考えな。他ごとで散漫になっているサマってのはね、子どもはすぐに気づくんだ」
胸をつかれるような一瞬。
わたくしがはっと息を呑むと、ずっと椅子に座っていた院長様はさっと立ち上がりました。
「どんな事情であれここに来たからには役に立ってもらうよ。ほら、みんな! 今日はこのお姉さんが遊んでくれるってさ!」
途端に子どもたちがわあっと歓声を上げました。一斉にわたくしに群がり、「あっち行って遊ぼう!」と院長室から引っ張り出そうとする――
「行ってきなさいな。私はちょっと、やることがあるから」
マリアンヌさんが手をひらひらと振りました。
わたくしは彼女と院長様に頭を下げ、子どもたちに引かれるまま彼らの楽園へと足を向けました。
子どもたちに連れて行かれた部屋は、手作りの玩具が転がる小さな部屋でした。ここに子どもが十数人も入ると狭いほどですが、子どもたちは気にした様子もありません。
彼らは元気で、陽気でした。よく笑う子どもたちです。幼い子の面倒も年長の子がちゃんと見てくれます。一体感のようなものが、全体にふんわりと漂っていました。