託宣が下りました。
 目を伏せると、見えるのは足下に群がるねずみたち。わたくしの足を引っ掻こうとするねずみはいません。少しはソラさんの怒りも鎮まってきたのでしょうか――

「これより偽巫女を刑に処す」

 全然鎮まっていませんでした! わたくしは顔を上げ、ぎょっと身をすくめました。

 ソラさんが空中に掲げた謎の藁人形。それが見る間に大きくふくれあがっていきます。狭い店内の空間を埋め尽くし、天井をつくほどの背丈へと――

 巨大な藁人形。心なしか、色合いがどす黒く変化しました。四肢を不自然にまげ、目も鼻も口もない顔がのっぺりとわたくしを見ます。

 ソラさんは藁人形の背後に隠れ、わたくしに指をつきつけました。

「行け、我が配下よ! 偽巫女に天罰を!」

 藁人形が大きく手を振り上げます。わたくしはぎゅっと目をつぶりました。ああ故郷のお父様お母様、先立つ不孝をお許しください――。

「きゃああああ!」
「……?」

 悲鳴に目を開き、わたくしは仰天しました。
 巨大な藁人形は、なぜかソラさんを両手で抱えると、その小さな体を空中へ持ち上げていました。

「ち、違う! 私じゃない、あっちだ――きゃあああっ! ふるな! 動かすな……!」

 これは――人形が暴走した?
 それとも暴走したのはソラさんの魔力?

 細かいことなどどうでもいい。わたくしはねずみを踏み越え――ねずみたちはすっかり動かなくなっていました――巨大藁人形の足に組み付きました。

「放して! その子を放して……!」

 がむしゃらでした。理由などありません。とにかく助けなくてはいけないと思ったのです。

 足に組み付くだけでは意味がありません。わたくしは近場の魔術具を使って藁人形を殴りつけたりしてみました。
 けれど藁でできた体には役に立ちません。平気な様子で、抱き上げたソラさんをがくがく振るいます。

「お、落ちる。巫女……っ!」
「大丈夫ですよ、落ちたらわたくしが受け止めますから。絶対に受け止めますから!」

 わたくしはソラさんに呼びかけながら、もっといい道具はないかと焦って視線を滑らせました。

 魔術具を正しく使えれば効果的なのでしょうが……あいにく、使い方の分かる道具は見当たりません。
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