託宣が下りました。
わたくしは大人しくうなずきました。どれだけラケシスを思ったところで、わたくしにできることなどないのです。
「待っていろ。必ず本当のことを突き止めてくる」
そう言って騎士はわたくしを抱きしめたあと、供を連れてどこかへ出かけていきました。
騎士がいなくなるととたんに静まりかえるお屋敷。広すぎる居間には身の置き所がなく、自然と部屋に――騎士が用意してくれた〝わたくしの部屋〟に閉じこもることになってしまいます。
切り替えて他のことをしたほうがいい。そうは思っても、何ができるのか見当もつかなくて。
「お姉さん……!」
そんなわたくしをおとなう人が現れたのは、食の進まないお昼を終えて少しのころ。
「カイ様……?」
騎士の仲間であり、わたくしの友人でもあるカイ・ロックハート様が、気遣わしげな面持ちでわたくしの部屋を覗きました。
お一人ではありません。もう一人、後ろに女性がいます。はっと目が醒めるような、美しい女性――
「突然すみません。――あ、彼女はクラリスと言います。クラリス・ゲッテンベルグ。僕らの仲間の一人です」
その名に聞き覚えがありました。勇者さまご一行の一人、治療師のクラリス様。
わたくしが会釈をすると、クラリス様は涼やかな目元をすっと細めました。