託宣が下りました。
「初めまして……。……あなたのことは、よくヴァイスやカイから聞いてる」
それはまるで、森の奥でひっそりと水を湛える湖のような声。清冽で、突き放すようなのに、聞き入らずにいられない響き。
思わずクラリス様に見とれてしまいました。職業がいまいち分からないゆったりとしたローブで体の線を隠しています。長くつややかな黒髪はどこか神秘的で、彼女の存在感を淡くぼかすよう。
「……例の託宣の時点で興味深く思っていた。あのヴァイスをよく伴侶宣言したもの……」
「あ、あのときはわたくしの意思ではありませんっ」
今となっては説得力がありませんが。「――星の神の託宣です」
「……そう。星の神の託宣……。そこが重要」
託宣は外れない、と低く涼しげな声がゆっくりと言葉を紡ぎます。
「――私の占いと同じくらい外れない。託宣が本物なら、あなたはヴァイスの子を産むことになる……。ご愁傷様」
「クラリス!」
カイ様が慌てて間に割って入り、引きつった笑顔で取りなそうとしました。「す、すみませんお姉さん! ちょっとした冗談ですからっ」
冗談にしても、旅の仲間にまでそう言われてしまう騎士もたいがいです。