託宣が下りました。

 わたくしは二人を部屋へ招き入れました。使用人を呼び、椅子の数を増やしてもらってからお茶を出してくれるよう頼むと、

「あまり長居はしませんから」

 カイ様はひたすら恐縮した様子で言いました。「お姉さんのご様子を見たかっただけです。大丈夫ですか?」

 前髪に隠れかかった目が心配そうに覗いています。
 わたくしはあいまいに笑いました。

「大丈夫です。まだ……最初以上に悪い報せはありませんし」
「……無理をしている顔」
「クラリス!――ええと、僕らも王宮には話をしたんです。ただその、――ラケシス様ご自身が、なぜ王宮に立ち入ったのかを黙秘していらっしゃるようで」
「え――?」

 ラケシスが? なぜ黙秘する必要があるのでしょう。

 自分のやりたいことがあるなら、例えまわりに責められようとも堂々と主張する。あの子はそういう子です。黙っているなど、らしくないこと。

「ラケシス様にもお考えがあるのでしょうが、このままでは王宮も強い手段をとらざるを得ません」
「強い手段……?」
「……拷問」

 クラリス様の静かな言葉が、わたくしの体の芯をひやりと貫きました。

「そんな……!」
「ことは王太子の命……。暗殺目的だけは、否定したようだけれど」

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