託宣が下りました。
カイ様が必死にフォローを入れてくれます。勇者さまご一行の中には、カイ様を安心して過ごさせてくれる方はいらっしゃらないのでしょうか。
「てのひらに載せた二つの大切なもの……。どちらかを手放さなくてはいけない……。選べずに、二つの重みで動けなくなっている……。あなたは真面目がすぎる」
すう、と細く息をすう音。
「だから神は、あなたを選んだのかもしれない」
――そうなのでしょうか?
思わず考え込んでしまいました。なぜ神は、騎士の相手にわたくしを選んだのでしょう?
単なる気まぐれのような気がしていました。あるいは、重要なのは騎士のほうであり、相手は誰でも良かったのではないか、と。
わたくしが選ばれたことに、理由などあるのでしょうか?
クラリス様は、見えづらいものを見ようとするかのように目を細めました。
「少し前の過去。強い後悔……。それから解放。それにともなって、大切なもののひとつの光が大きくなっている……。最近何かいいことがあったのね。迷いが少し解けるほどの」
「――それは」
「もう少し前の過去。何かから逃げ惑っている……。不可思議な形のものに追われている。あなたにとってそれがさっぱり理解不能で形のつかめない存在だったということ。不定型な魔物のようなのに、無駄に光を背負っていて一方的なもの……あら、これは」