託宣が下りました。

 考えてみれば当たり前のことですが、身の引き締まる思いでした。少なくとも、流されるようにして生きていては駄目なことは分かります。

(障害があっても……強く心を持って。王女様のことも……ラケシスのことも)

「ありがとうございます、クラリス様」

 心をこめて頭を下げました。
 クラリス様は少しだけ驚いたように目を見開いて、それから口元に笑みを浮かべました。

「……悪くない。ヴァイスの隣にいるあなたの姿……未来が楽しみね」

 つられてその未来を想像してしまったわたくしは、胸にあたたかさがあふれるのを感じて、またひとつ自分の気持ちを確認したのでした。心はやはりそちらに傾いている――。



 カイ様とクラリス様がお帰りになったあと、入れ替わるようにしてわたくしの元に手紙が届きました。

 父母からのものです。大急ぎで中を開くと、まずわたくしの身を案じる文章のあと、王宮と交渉している旨が続きました。

 抗議ではなく、交渉――。何となく腑に落ちないまま読み進めたわたくしは、すぐに血の気の引く思いを味わいました。

『ラケシスはレジスタンスとつながりがあった。決して活動をともにしていたわけではないが――、レジスタンスの主要メンバーと知人であることを、否定はできない』

 まさか! どさりと椅子に座り込み、呆然と手紙の文字を見つめます。手が震え、その先の内容が頭に入ってこない――

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