託宣が下りました。

 騎士が大仰にため息をつきます。

「すまんな。モラは人見知りが激しいんだ」
「ちち、違う。決して恐いとかじゃない! たた、ただ、初めて会うときは正装していたかったというか!」
「確かに汚れた格好だな。なんだ、親父殿の手伝いでもしていたのか?」
「――料理をしていただけだよ」

 すると騎士は哀れむような目をして、

「今日もこの家が無事であった奇跡に感謝せねば……」

 階段の陰からモラさんの顔が半分だけ覗きました。

「うるさいな! 父さんの実験よりなんぼかマシだ!」

 アレス様に食べてほしかったんだ、とモラさんは右腕を振り上げて主張します。

「よせよせ。昔お前の料理を律儀に全部食ったアレスが三日間寝込んだのを忘れたのか」
「ううううるさいっ。子どものころの話だろ、今は違う!」
「しかしお前が料理をすると親父殿が喜ぶからなあ。未知の化学反応が見られるとかで……ところで親父殿はどこにいる?」
「ま、町に行った」

 ぼそぼそと話すモラさんの様子は、何だか動物を恐がるカイ様を思わせます。
 わたくしは何となくモラさんに親しみを持ちました。こういったタイプの人は嫌いになれません。

「町か。珍しいな」

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