託宣が下りました。
騎士はあごに手をかけました。「よもや町に実験しに行ったんじゃあるまいな」
「知らない。機嫌は良かったけど」
「親父殿の機嫌がいいだと? それは大問題だ。王都の危機かもしれん」
父親に対してひどい言いようです。「出かけるついでに親父殿を捜しておくか……やれやれ、用事が増えた」
モラ、と騎士はわたくしの背中を押しながら、
「巫女はソラの見舞いにきた。ソラに会わせてやってくれ。それから、俺が迎えに来るまで丁重にもてなすように」
「……わ、分かったよ」
モラさんはしぶしぶといった様子で「早く迎えに来てくれよ」と答えます。
「とにかくそこから出てこい。ちゃんと挨拶しろ」
騎士がそう言いつけてから、モラさんがこそっと出てくるまでに、たっぷり五分はあった気がします。
「……初めまして、兄がいつも……世話に……なってます……」
しかしこちらまでは来てくれません。わたくしが一歩近づくと、一歩後ろへ下がってしまいます。距離が遠い。
とは言え、嫌がる人を無理やり来させるわけにもいきません。わたくしはその距離のまま、頭を下げました。
「こちらこそ。よろしくお願いします、モラさん」
「……あのさ」
ぼそぼそと話しているはずなのに声がよく通るあたりは、さすが騎士の妹さんといったところでしょうか。