託宣が下りました。
 お父上はちゃんと薬草の代金を払ってくれました。おまけに「娘が迷惑かけた詫びだ」と上乗せしてくれました。
 わたくし個人の話とは言え、修道院にとって助かることでしたので、ありがたくいただいておくことにしました。

「それとこれは、以前アンナ様に頼まれていたローブだよ。魔術をかけてある。渡しておいてくれるかな」
「はあ……一体どんな魔術を?」
「冬でもあたたかい。そろそろ寒くなってくる時期だろう? アンナ様は寒がりなんだ、知っていたかね?」

 いえそんな個人的な話は存じませんが。

「このローブが気に入れば、頃合いを見て巫女全員分を作るそうだ。うちとしてもぜひ気に入ってもらいたいね」
「……」

 わたくしは受け取った白いローブをふしぎな気持ちで見つめました。
 魔術と言えば戦いの道具――。そんな先入観がわたくしにはありました。

 けれど実際にはこうして平和的な使い方もできるのだと……頭では分かっていても、どこかで納得していなかったのでしょうか。

(わたくしは、本当にまだまだですね)

 店の外に出ると、真昼の太陽がぽかぽかと出迎えてくれました。薄暗い店内に慣れた目にはちょっとつらくて、わたくしは手をかざします。

 今日一日で、いろいろなことに気づきました。思い返してみると、こうしてこのお店に来たことも悪い経験ではなかったようです。

 もっとも、二度は来たくありませんが……

 何となく、薬草を売ることを理由にして、また来させられる気がします。アンナ様は託宣至上主義。そしてアンナ様の命は絶対です。

「またきっと会えるだろうね」

 ドアのところまでお父上とソラさんが見送りに来てくれました。
 ソラさんは、今度はお父上の足に隠れてこっそりわたくしの様子をうかがっています。十歳にしては幼い気がするので、騎士ももう少し厳しくしつけたほうがよいかもしれません。

 ただ――根は決して悪い子ではないと、思います。

 わたくしが手を振ったとき、わたくしをにらみつけたまま、おずおずとその右手を振り返してくれたときの赤く染まった頬――。

 それは決して、わたくしに対する悪意ではありませんでしたから。
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