託宣が下りました。
 悪くない一日でした。

「巫女よ。あそこは俺の実家であって俺の家ではないが、気に入ったならあそこに住んでもいいぞ?」

 悪くない一日だったんです。ねずみに襲われたり人形に襲われたりしましたが、悪くない――。

「ちなみに俺は五人兄弟だ。下は四人全員妹だから、俺と結婚すれば一気に妹が増えてお得だぞ……うん? 巫女は何人兄弟だったかな」

 修道院まで送るという名目でついてくる騎士は、わざわざ足をとめてぽんと手を打ちました。

「そうだ、うちの一番上の妹は巫女より年上だった。年上の妹も面白いだろう?」

 わたくしは――

 とうとう頭を抱えました。どうしてこう、騎士の話題はわたくしの頭痛の種を増やしていくのでしょうか。年上の妹? 一番厄介ではないですか! いえ結婚する予定はないのですが、それにしても!

 あなたさえついてこなければ、『いい一日でした』で終わるのです、騎士ヴァイス……!

 わたくしはくるりと振り返り騎士をにらみつけました。
 すると騎士は、なぜかにっこり笑いました。

「な。うちの家族はいい奴らだったろう?」
「――」

 わたくしは唇を曲げました。正直な思いを答えるのがとても癪。とても悔しい。……けれど。

「……ええ、そうですね」

 日差しがまぶしい。何だか太陽が笑っているみたい――



 この話には後日談があります。

 それは一週間後のことでした。騎士ヴァイスが来襲することに怯えながらシェーラと食べるお昼ご飯。食堂は星の巫女や見習い巫女、下働きのかたでいっぱいです。

 そんな中……

「味が薄い」

 堂々と修道院に乗り込んで、テーブルについてご飯を食べ、文句を言っている人物がひとり。

「……ソラさん。何をしているの?」

 わたくしは隣に陣取ったソラさんの手元を呆れながら眺めました。

 修道院には子どもも多いので、子ども用のご飯もあります。彼女が食べているのはまさしくそれで、味付けは薄いものの栄養は満点です。

「そなたの採点に来た」

 口をもぐもぐさせながら、ソラさんはそんなことを言いました。

「採点?」
「仕方がないから託宣が偽ではなかったことは認めよう。そうなれば次はそなたが兄上にふさわしいかどうかを我が採点する」
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