託宣が下りました。
噴水に向かう合うように……
像が置かれていました。一人の青年をかたどった銅像です。
――勇者アレス様の。
「あらあれは、昔作りかけて頓挫した銅像よねお父さん?」
「アレス自身が嫌がって作るのをやめさせた銅像ねお父様?」
「その通り。そのときの型が残っていたんでな、魔王復活の託宣にかこつけて完成させたわけだ」
わたくしはその銅像に見入っておりました。
造形自体はごくふつうの出来の、とりたてて精巧とも言えないような像です。
その像に今、色とりどりの花輪がかけられていました。両腕は花で埋まり、首も顔半分が埋まるほど花輪がかけられ、残す足下にも山となってアレス様の勇士を彩っています。
「あの花は……?」
「うむ。『アレス像に願いをこめて花輪をかけるとアレスの力が増大する』というまじないでな。町の人間はこぞって花輪を作っているところなんだ」
見ればこうしている間にも、像の足下に新たな花輪を置いていく人の姿が。
「ほ、本当にアレス様にお力が?」
わたくしがお父上を凝視すると、お父上は騎士そっくりの仕草であごに指をかけました。
「なに。国民の不安を解消するには一般人にもできる『行動』を作るのが一番だと言ってやっただけなんだが」
「!? それじゃまさか」
「私がエヴァレット卿に請われて助言した。具体的な行動までは指定しなかったぞ? この趣向はエヴァレット卿ではあるまいから……いったい誰だろうな、花輪なんぞと言い出したのは」
わたくしはあっけにとられました。監査室長のエヴァレット卿に助言――
騎士のお父上はわたくしが思うよりずっとすごい人のようです。それにしても銅像に花輪で人々の不安を解消しようだなんて。
(単純で分かりやすいけれど、どこか子どもっぽいような――)