託宣が下りました。
遠目に拝見したことはあっても、これほど近くで見るのは初めてです。ゆるりとした動作で広場を見渡す姫の動きは、まるで悠久に時間をつかうことを許されているかのよう。
「アルベルト」
姫の声はよく通りました。「は」と短い声を返し、兵士の中から一人の男性が勇者像へと歩み寄っていきます。
兵といっても年老いた男性でした。彼が手にしていた花輪を像の足下へ置くと、民衆の中から「おお」と歓声が沸きました。
「姫も勇者のために花を手向けられる……」
当の姫は、献花する兵を見てはいませんでした。相変わらずゆったりと視線を辺りに巡らせています。
やがて、
「姫。おりましたぞ」
兵士の一人が手に持った槍をこちらへ向けました。
(………!)
わたくしは地面に棒を刺されたかのように動けませんでした。王女がこちらへ向かってくる。騎乗したまま、兵士に守られ、ゆっくりと――
一行がわたくしたちの前で止まります。
馬上の美姫が、薄紅をはいた唇をうっすらと開いて。
「捜したわ、アレクサンドル」
「―――」
一瞬、誰のことを言っているのか分かりませんでした。
「よもや私をお捜しとは、姫」
そう答えたのは騎士のお父上。猫背を伸ばすわけでもなく、泰然としています。
エリシャヴェーラ様は子どものように、つんと唇を突き出しました。