託宣が下りました。
 
「……御前失礼致します、エリシャヴェーラ様」

 気づいたときには、わたくしは声を発してしまっておりました。
 一般市民風情が王族と口を利くことなど許されていない。そんなこと、よく知っていたはずなのに。

「姫は、騎士ヴァイスも意思ある一人の人間と、認めていらっしゃいますか?」

 エリシャヴェーラ様の首が、おっくうそうにこちらに回りました。

 目が、合う――。こくりと、喉が鳴る。

「……この女はなぁに、アレクサンドル?」
「私の家と懇意にしている者です。ヴァイスのこともよく知っております」
「ふぅん」

 姫が鼻を鳴らすのが分かりました。いけない、その一瞬だけで姫様はすでにわたくしを『いないもの』へと変えようとしている――

「姫様、騎士にも心があります。それを無理やり王という器におさめてしまおうなど、騎士を愛する者として許されることでしょうか?」

 ――『役割』に縛られる人生は嫌と、言ったのは姫自身。それなのに。

「いいえ――騎士ヴァイスはきっと必要ならばその『役割』をこなすでしょう。けれどそれは、騎士自身の意思が伴ってこそです。強制されるべきことではありません!」

 姫君の顔が真っ赤に染まりました。姫の憤怒に同調したのか、それまで黙って控えていた兵士の一人が「黙れ! 平民風情が」とわたくしに槍を向けます。

 わたくしはひるみませんでした。槍の先端が目の前にある。冬の白い光を浴びて、ぎらりと目をさすように。

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