託宣が下りました。


 かつて、騎士から逃げていた時期がありました。騎士に「妻になれ」と強制されることが嫌だった――わたくしの意思がそこにはなかったから。

 騎士は強引でした。有無を言わせぬ勢いのある人でした。

 けれど、最後の一線だけは決して踏み越えようとはしなかった。最後の最後の部分で、わたくしの意思を守ってくれた。

 ――騎士が自ら『王族なろう』というのならいい。

 でもそうでないのなら……わたくしは、彼の意思を守りたい。


「お黙りなさい! 私は王女よ、私の夫になるということはそういうことよ――王女に生まれたことが悪かったというの!」

 姫は半狂乱で叫びました。「私が何もしなかったと思っているの。ヴァイスのためならなんでもしたわ。それなのに言うことを聞いてくれなかったのは、ヴァイスのほうよ!」

 例えば『王女の役割』について考えてみたり――
 姫なりに、努力はしたのでしょう。

 わたくしは言いようもなく悲しくなりました。姫は姫なりに騎士を愛している。

 でも、人の心は複雑なもの。愛したから愛されるとは限らない。一度すれ違い始めたら、その先が結びつく可能性は限りなく低い。

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